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2025.11.25

決算書のどこを見たら、経営課題がわかるのか?ーHELLO経営通信

こんにちは。
株式会社HELLO base代表取締役 渡邉一史(わたなべひとし)です。

秋も深まり、朝晩の冷え込みが増してきました。
どうぞ暖かくしてお過ごしください。

このブログでは経営に必要な知識を体系的・実践的に学べる“経営の教養講座”として、
毎回ひとつのテーマを掘り下げてお伝えしています。


決算書のどこを見たら、経営課題がわかるのか?  

毎年届く決算書。
会計事務所に「黒字ですね」と言われて一安心。
――でも実際の通帳を見ると、お金はあまり残っていない。
そんな経験、ありませんか?

実は、決算書は“読む場所”を間違えると、本当の経営課題が見えません。
逆に、たった数カ所を押さえるだけで、会社の「現状」「課題」「打ち手」が明確になります。
今日は、その見方をわかりやすく整理してお伝えします。


損益計算書(PL)で「稼ぐ力」を見る

まず注目すべきは、営業利益。
これは「本業でどれだけ儲けているか」を示す数字です。

・売上が伸びているのに、営業利益が減っている
・人件費や仕入原価が増えて、粗利率が下がっている
・広告費や外注費が急増している

こうした変化は、コスト構造や価格転嫁に課題があるサインです。

営業利益率(営業利益 ÷ 売上高)が5%を下回ると、固定費や人件費の上昇が利益を圧迫している可能性があります。
経常利益が営業利益より大きく下がっていれば、借入の利息負担や一時損失の影響を疑うべきです。

経営者が見るべきは、「どこで稼ぎ、どこで利益が消えているのか」。
この視点があるだけで、経営の精度は格段に上がります。


貸借対照表(BS)で「会社の体力」を見る

次に見るのは貸借対照表。
ここには会社の安全性と資金繰りの状態が現れます。

・現預金が減っている → 資金繰りに余裕がない
・売掛金・在庫が増えている → キャッシュ化が遅れている
・借入金が増えている → 運転資金が足りていない

自己資本比率が20%を下回っている会社は、借入依存が強く、資金繰りリスクを抱えやすい体質です。
黒字なのにお金が残らない企業の多くは、売掛金や在庫が膨らみ、手元資金が圧迫されています。

数字の変化には、すべて経営判断が潜んでいます。
何に投資し、何に資金を使ったのか。
その“使い方の癖”が会社の強さと弱さをつくります。


営業キャッシュフローから「返済後に何が残るか」を見る

経営の実態をつかむうえで、最も重要なのがキャッシュフローです。
営業キャッシュフロー(営業CF)は、「本業で生み出した現金」を示します。

ざっくりとした計算式は次の通りです。
営業CF = 営業利益 × 0.7 + 減価償却費

ここまでは会計上の利益を現金ベースに置き換えた数字です。
しかし本当の経営の余力を知るには、さらに年間の借入返済額を差し引いてください。
営業CF - 年間借入返済額 = 実質キャッシュフロー(自由に使えるお金)

この数字がプラスであれば、返済を終えてもお金が残っている。
つまり、「攻めの経営」ができる会社です。

逆にマイナスなら、借入返済に追われ、資金繰りにゆとりがない状態です。
たとえば、
営業CF 2,000万円 - 借入返済 1,200万円 = +800万円
→ 余力あり。投資・報酬・内部留保に使える資金が残る。

営業CF 2,000万円 - 借入返済 2,500万円 = ▲500万円
→ 返済がキャッシュを上回り、資金繰りが圧迫。
この差が“経営の自由度”そのものです。


数字が教えてくれる3つの判断軸

① 返済ペースは妥当か
営業CFを超える返済は危険信号です。
「お金で返せるペースになっているか」を常にチェックしましょう。

② 投資・報酬のバランスは適正か
残ったキャッシュをどう使うかで、会社の未来が決まります。
利益ではなく、実際に残る現金を基準に投資や報酬を判断することが大切です。

③ 財務体質の改善はどこから着手すべきか
実質キャッシュフローがマイナスの会社は、返済条件の見直し・借入の組み換え・資産圧縮など、
“お金の流れ”から再設計する必要があります。


まとめ:決算書は「過去の結果」ではなく「未来の道しるべ」

決算書は数字の羅列ではありません。
経営者に「何をすべきか」を教えてくれる羅針盤です。

営業利益は事業の筋力、貸借対照表は会社の体力、
そして営業CF-借入返済は“息の長さ”を示す呼吸のようなものです。

利益ではなく、
「返済を終えても残る現金」を見る。
これが、会社の“真の健康状態”を知るためのシンプルで最強の指標です。

数字を読むことは、経営を守ること。
次の決算書を受け取ったら、
ぜひこの一行――
【営業キャッシュフロー - 借入返済額】
を確かめてみてください。

それが、経営者にしか見えない「安心の数字」です。

次号は「利益が出ているのに資金が減る会社の3つの共通点」についてお届けします。
楽しみにしていてください!

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